ヘタウマなのか、ただのヘタクソか

今日は「綺麗ではないが何故か心惹かれる絵画」というコンセプト(たぶん)のもと5月14日まで府中市美術館で展示されていた「へそまがり 日本美術展」を見てきた感想を図録からの写真を交えつつ書いてみます。(加筆しました)

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まずは目玉の一つ「将軍様の絵」

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どこか愛嬌のある家光公の鶏。

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その子の四代将軍 家綱公の作品

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家綱公の画の特徴は「鋭い眼光」というか「目つきの悪さ」

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鶏の目つきではなく猛禽類のそれ。

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三十六歌仙の一人、中納言兼輔を描いているのですが、歌人というより気難しい老中を連想させます。
「上様、由井正雪の処罰は如何にいたしましょうか」などと相談した際の様子を描いたのでしょうか*1  

参考  三十六歌仙額 中納言兼輔 (狩野尚信)

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家綱公ばかりdis るのも可哀そう。家光君の画力も相当なもの

これは別名「ピヨピヨ鳳凰」 

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みみずく

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参考(テラフォーマーズ)目の辺がなんか似てる。

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新種のテラフォーマーズでしょうか(ほんとは兎の絵です)

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ところで、家臣(部下)の心をつなぎ留めるのに贈り物が有効なことは江戸時代も変わりなく、将軍様がお描きになった書画は度々家臣に下賜されていたことが判っています。「寛政重修諸家譜」によれば、家光公は26件 家綱公はなんと78件も自筆の絵を下賜されているそうです。

 

殿)  これまでのその方の労苦に報い、ワシが描いた絵を授ける。

家臣) ははっ 有り難き幸せ。

といって渡された絵が

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                            徳川家綱「闘鶏図」)

こんなのだったら、むしろ謀反を起こされそうな気がしますが大丈夫だったのでしょうか。心配です。

 

さて、

西洋画壇も負けていません。素朴派の雄 アンリ・ルソーさんの作品を観てみましょう

何か宙に浮いてる。
高校のころ同じような絵を描いて美術の評価2だったなぁ。(しみじみ)

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かのピカソが「どんなに頑張ってもルソーのようには描けない」と褒めたそうですが
どんなに頑張って観てもヘタクソ。


実はルソーは本気で書いても↑の絵のレベルという根強い説があって、ルソーの名を世に知らしめた「洗濯船の夜会」は彼を笑いものにすることが当初の目的だったとも言われております。(意に反してルソーの評価を高めてしまったわけですね)ま、ピカソがどれだけ悩んでも届かなかったモノを生まれながらにして持っている と考えると凄いことなんでしょうが、、、

 

で、ルソーをまねてピカソに褒めて欲しかった? 三岸好太郎の作品

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やっぱり、天然モノと養殖モノの違いといいますか、ルソーさんには敵いませんな。

 

そしてヘタウマといえばこの人。

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しかし「骨正月」ってなんでしょう?
骨休めよりリラックスしている ってことですかね。

 

続いては、歌川国芳ニャロメ! 荷宝蔵のむだ書 より

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描いたのは、尻尾を振る猫ではなくて尻尾が裂けた「猫また」(化け猫)だそうです。
「大でき」とか書いちゃって、ご満悦のご様子

 

おかしな絵ばかり紹介してきましたが、もちろん真っ当な絵も展示されていましたよ。

 

みんなが大好き、伊藤若冲

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池大雅  落款に「指墨」とあり指の腹や爪を使って描いたことが分かります*2

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京の個性派こと長澤蘆雪の子犬

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その師匠とされる円山応挙の子犬

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応挙もいいですが、ぼくは蘆雪の方が好き。

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府中市美術館はちょっと変わった視点の展示をするので、気になっていたのですが
なかなか見に行けなかったんですよ。

今回のGWに伺って、期待通りに楽しい時を過ごせました。また機会があれば訪ねて観たいところです。

では~

 

*1:家綱公の治世は、家光君が乱発した「お家とりつぶし」の結果生まれた多数の浪人への対策に追われた と言っても良いかと。その気苦労が画風に現れたのかもしれません

*2:ちなみに、指の腹などを使って描いた絵を「指頭図」と呼びます